北海道大学 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2025年10月16日(木) 10:00~15:55
会場:オンライン開催
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、北海道大学
発表内容一覧
発表内容詳細
- 10:00~10:25
- 材料
1)セルロース分解物を用いた新規ポリマー材料の合成
北海道大学 大学院工学研究院 応用化学部門 分子機能化学分野 助教 リ ホウ
新技術の概要
セルロース由来化合物であるレボグルコセノンおよびジヒドロレボグルコセノンを出発原料として、一段階合成でスピロ構造を有するエポキシドまたはオキセタンに変換した。続いて開環重合、または共重合により、高いガラス転移温度を有する新規ポリエーテルとポリエステルが合成出来た。また、架橋剤としても利用可能です。
従来技術・競合技術との比較
今回の新規エポキシドやオキセタンを用いた重合はこれまで報告例がなかった。バイオマス由来原料を用い、高いガラス転移温度を有するポリエーテルやポリエステルを合成することは、従来の報告と比べ、合成ルートが短く、より簡便である。また、同じモノマーが架橋剤としても利用でき、その多用途性も示している。
新技術の特徴
・豊富なセルロースバイオマス資源を新規利用した反応性エポキシ/オキセタン樹脂。特に脂環構造を有することが特長
・短い合成ルート
・複数の応用目的に優れた性質を示す。特に高いTg、非芳香族であることから無色透明、低屈折率、光透過性、さらに耐光性も期待できる。
想定される用途
・硬質、耐熱プラスチック(熱可塑、熱硬化)
・有機ガラス、レンズ等の光学用の材料、部材、封止剤、接着剤
・光/熱硬化性樹脂材料、エポキシ/チオール/アミン樹脂などの架橋剤
関連情報
サンプルあり
- 10:30~10:55
- エネルギー
2)二酸化マンガン材料の極小ナノ粒子化技術を開発
北海道大学 大学院理学研究院 化学部門 無機・分析化学分野 准教授 小林 弘明
新技術の概要
粒径10 nm以下のアルファ型二酸化マンガン極小ナノ粒子の短時間合成技術を開発した。本材料は極小ナノ粒子化によって特異的な粒子形態を示し、マグネシウムやカルシウム、亜鉛など金属負極を使用した次世代蓄電池の正極性能に高い特性を示した。
従来技術・競合技術との比較
従来技術の水熱法で得られるアルファ型二酸化マンガンはトンネル型構造に由来する棒状結晶を示すが、極小ナノ粒子はアスペクト比の小さい球状結晶を示し、トンネルのエッジ面が多い特徴を有する。そのため、多価イオンの高速な脱挿入が可能となった。
新技術の特徴
・アルファ型二酸化マンガンとして既存にない多孔質なナノ粒子
・活性なトンネルエッジ面の多い粒子形態
・既存の二酸化マンガンへの代替による高性能化
想定される用途
・リチウム一次電池など電池正極材料
・マグネシウムや亜鉛電池など次世代蓄電池正極材料
・多孔質を活かした触媒や電極触媒などへの展開
関連情報
サンプルあり
- 11:00~11:25
- アグリ・バイオ
3)機能性脂質ナノ粒子の開発と標準粒子および長鎖遺伝子導入への応用
北海道大学 大学院工学研究院 応用化学部門 分子機能化学分野 准教授 真栄城 正寿
新技術の概要
薬物送達システムとして用いられている脂質ナノ粒子の表面にワンステップで細胞外小胞(EV)やウイルスのタンパク質を提示する作製法を確立した。また、通常の脂質ナノ粒子では困難な長鎖遺伝子の細胞導入を効率化する方法を確立した。
従来技術・競合技術との比較
内容1:脂質ナノ粒子表面にタンパク質や抗体を提示させるためには、化学修飾が主に利用されている。本技術ではマイクロ流体デバイスを用いて、EVやウイルスのタンパク質を提示した脂質ナノ粒子をワンステップで作製できる。
内容2:一般的な脂質ナノ粒子では、10 kbp以上の遺伝子を細胞に導入することは困難であったが、本発明で開発した粒子は約8倍の導入効率の改善を達成した。
新技術の特徴
・EVやウイルスを模倣した脂質ナノ粒子を作製可能
・任意の種類のタンパク質を表面に提示し、内部に核酸などの薬剤を搭載した脂質ナノ粒子を細胞フリーでフロー合成可能
・長鎖遺伝子のトランスフェクション効率の改善
想定される用途
・EVやウイルス検出のための標準粒子
・薬物送達システム(DDS)
・遺伝子導入試薬
関連情報
サンプルあり
- 11:30~11:55
- アグリ・バイオ
4)非可食性バイオマスの微生物共培養系を用いたPHAの産生
北海道大学 大学院農学研究院 連携研究部門 連携推進分野 准教授 高須賀 太一
新技術の概要
本技術は、非可食性原料から微生物産生ポリエステルを得る技術に関するものである。非可食性原料を含む培地中で木質分解性昆虫共生放線菌とPHA産生菌とを共培養することで低コストで簡便に、ポリエステルを製造する技術である。
従来技術・競合技術との比較
従来技術は、遺伝子組換え等を行った微生物を用いるため隔離された大規模な施設が必要であった。またセルラーゼを用いるため、製造コストが高くなるという問題があった。本技術は、組換え菌やセルラーゼを使用することなくPHAを生産できる点で優れる。
新技術の特徴
・共培養系
・非可食バイオマス
・原料からPHAまでワンポットで生産
想定される用途
・非可食バイオマスからの物質生産
関連情報
サンプルあり
- 12:00~12:25
- アグリ・バイオ
5)マコンブ由来グルコシルトランスフェラーゼ阻害用組成物
北海道大学 大学院水産科学研究院 海洋応用生命科学部門 水産資源開発工学分野
准教授 熊谷 祐也
新技術の概要
マコンブを亜臨界水処理することで得られる成分に、う蝕予防およびバイオフィルム形成阻害作用を見出し、本技術を特許化した。この技術を基盤として、マコンブ由来成分を活用したオーラルケア製品の開発を進める。また、ペット用製品や各種バイオフィルム関連問題の解決を目的とした製品への応用展開を視野に入れている。
従来技術・競合技術との比較
本製品は天然のマコンブ由来で安全性が高く、多用できる点が特徴である。養殖による原料確保が容易で、抽出操作不要の亜臨界水処理により低コスト生産が可能である。さらに、主要成分のアルギン酸は食品用増粘多糖類として広く利用されており、作用効果や機能性物質としての応用価値が期待される。
新技術の特徴
・天然成分由来
・大量に原料がある点
・高分子
想定される用途
・オーラルケア製品
・ペットフード製品
・食品添加物
- 13:00~13:25
- 材料
6)無機二次元材料で実現する高耐久・高性能センサ
北海道大学 大学院工学研究院 応用化学部門 無機材料化学分野 教授 島田 敏宏
新技術の概要
MoS2などの金属カルコゲナイドの持つ、優れた電気伝導性、表面反応性を活かした新たなセンシング材料を提案する。無機骨格に由来する高耐久を有し、高選択性・高感度での検出を可能とすることを実証している。
従来技術・競合技術との比較
従来の分子センシング材料である分子インプリントポリマー(MIP)は、有機材料のため耐久性が低いという課題があった。本技術は無機化合物を用いることで、高耐久性を実現した新たな材料である。洗浄等のセンシング対象物質の除去による再利用も容易であり、運用コストの低減に寄与する。
新技術の特徴
・無機化合物であり、高耐久性、高耐熱性
・電気化学応答でµMレベルを検出可能、高選択性
・耐久性に優れ、センシング対象物質の除去が容易で再利用が容易
想定される用途
・VOC(トルエン等)モニタリング用環境センサ
・ウェアラブルデバイスによる生体物質リアルタイム検出
・食品・医薬品中の残留薬物・添加物検査
関連情報
サンプルあり
- 13:30~13:55
- デバイス・装置
7)放射線の種類とエネルギーを簡便な検出器で正確に判別する
北海道大学 アイソトープ総合センター 管理室 技術専門職員 阿保 憲史
新技術の概要
シンチレーション検出器は、物質(シンチレータ)が放射線で発光する現象を利用し、光を電気信号に変換して検出する装置である。提案する新技術は、発光に伴う電気信号の形状が放射線の種類によって異なることを利用し、電気信号の特徴量を用いた簡便な手法で放射線の種類を判別し、エネルギーも測定できる方法である。
従来技術・競合技術との比較
α線とβ⁻線を同時計測する装置は既に実用化されているが、γ線を含む三種の放射線を同時に測定・識別する技術は世界的に未確立である。本技術では、信号波形から特徴量を抽出し、統計学的根拠に基づく正確な判別を行うことにより、各放射線を99.9%以上の高精度で判別を可能とした。
新技術の特徴
・α線、β⁻線、γ線を一つの検出器で判別可能であり、判別精度は99.9%以上と非常に高精度である
・放射線のエネルギーも測定可能であることから、ある程度の核種推定が可能である
・検出器の大きさは手のひらサイズから作成可能であり、可搬性に優れている
想定される用途
・放射線管理区域などにおける汚染検査用サーベイメータ
・排水・排気設備におけるリアルタイム放射能モニタリング
・食品に含まれる放射性同位元素の判別
- 14:00~14:25
- 医療・福祉
8)陽子線音響技術で実現する陽子線がん治療の高精度化
北海道大学 大学院工学研究院 応用量子科学部門 量子生命工学分野 教授 松浦 妙子
新技術の概要
陽子線治療は、陽子線が形成する線量ピークを活かす治療であり、飛程精度が治療の正確性と直結する。しかし、患者体内では様々な要因により飛程に不確かさが生じる課題がある。本技術は、陽子線照射時の熱音響波の非侵襲的観測情報と治療計画情報をもとに、感度行列法に基づき体組織の正確な阻止能比を求めることで、飛程精度を向上させるものである。
従来技術・競合技術との比較
本技術は、陽子線の核反応を利用する手法と比べ、計測装置が小型かつ低コストである。また、ビームごとに熱音響波を観測し飛程を取得する手法と比べ、原理的に少数のビーム情報から全てのビームの飛程を取得可能である。さらに、音響波飛程検出の主要な誤差要因である体内組織の音速の不確かさも同時に解決するものである。
新技術の特徴
・比較的小型かつ低コストの検出器を用いた熱音響波観測
・患者毎の体組織の高精度な阻止能比および音速推定
・非侵襲的な手法で、余分な照射領域(マージン)の最小化が可能
想定される用途
・陽子線・重粒子線治療の治療計画を支援
・陽子線・重粒子線治療の照射状況のリアルタイム測定
- 14:30~14:55
- 医療・福祉
9)遺伝子増幅手法の最適化で網羅的な寄生虫症検査を実現
北海道大学 人獣共通感染症国際共同研究所 国際協力・教育部門 助教 杉 達紀
新技術の概要
海外から持ち込まれる寄生虫症は多岐にわたり、それぞれの寄生虫種ごとに個別の遺伝子検査システムを準備するのは難しいのが現状です。本技術は、寄生虫が持つ18S rRNA配列をポータブルタイプの次世代シーケンサーで解析できるようにする仕組みで、たった一つの検査手法で多くの種類の寄生虫症を検査できます。
従来技術・競合技術との比較
従来の網羅的寄生虫検出は高精度のNGSが必要でコストが高く、解析可能な遺伝子断片が短いため不十分な寄生虫種同定能が課題でした。本技術は、寄生虫を高精度に特定する長い遺伝子を解析できます。さらに、宿主遺伝子増幅を抑えるため、血液など宿主細胞を多く含む検体から寄生虫の遺伝子検査が可能です。
新技術の特徴
・血液検体などの宿主が豊富な検体からの病原体遺伝子検査
・特定の対象に縛られない網羅的な寄生虫遺伝子検査
・ポータブルNGSを活用した安価、迅速な病原体遺伝子検査の実現
想定される用途
・寄生虫症患者の診断補助
・輸血血液製剤における寄生虫スクリーニング
・家畜輸入検疫における寄生虫スクリーニング
関連情報
サンプルあり
- 15:00~15:25
- 材料
10)簡便な重合のみでフォトニック材料を作製する技術
北海道大学 大学院先端生命科学研究院 先端融合科学研究部門 准教授 野々山 貴行
新技術の概要
重合すると相分離する組成の溶液を原料として、LED干渉UV光で受光面の光重合を時空間制御し、重合した樹脂内部に空間的に100nm~数µm周期の規則的な相分離を一括形成させることで、フォトニック特性を有する材料を合成する簡便な手法を開発した。
従来技術・競合技術との比較
従来フォトニック構造を作製するためには、トップダウン的な切削(CDの記録面)やボトムアップ的な低分子をせん断などで配向させる技術があったが、この手法は簡便・迅速・化学構造の汎用性・大面積化において従来の技術より優れている。
新技術の特徴
・簡単な光重合方法でフォトニック材料を合成可能
・短時間(1分程度)で作成可能
・光干渉を用いているため、光学パラメータを調整することでフォトニック構造のサイズを調整可能
想定される用途
・フォトニックセンサー(微小ひずみ・ガス/バイオセンシング用など)
・光量子コンピュータ(ビームスプリッタ/干渉計、波長/位相制御導波路など)
・意匠性の高いデザイン材料(装飾用、セキュリティー用など)
関連情報
サンプルあり
展示品あり
- 15:30~15:55
- アグリ・バイオ
11)ワイン搾りかすを活用した農作物凍霜害防止剤
北海道大学 大学院農学研究院 基盤研究部門 生物資源科学分野 講師 実山 豊
新技術の概要
本技術は、ワイン醸造用ぶどうの搾りかすから得られた成分を植物用凍霜害防止剤として活用した技術であり、その製造に関するものである。ぶどう由来の天然由来成分を噴霧することで、凍害から植物を守る技術である。
従来技術・競合技術との比較
本技術は、天然由来成分を用いた薬剤であるため、環境負荷が低い点が特徴であり、また実際の農作物でもその効果が確認されている。
新技術の特徴
・ワイン醸造用ぶどうの搾りかす
・植物用凍霜害防止剤
・天然由来成分
想定される用途
・凍霜害防止剤
お問い合わせ
連携・ライセンスについて
北海道大学 産学・地域協働推進機構 産学連携推進本部
TEL:011-706-9561
URL:https://www.mcip.hokudai.ac.jp/about/onestop.html
新技術説明会について
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
TEL:03-5214-7519
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