理化学研究所 新技術説明会【オンライン開催】
日時:2025年06月03日(火) 10:00~15:55
会場:オンライン
参加費:無料
主催:科学技術振興機構、理化学研究所、
株式会社理研イノベーション
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発表内容一覧
- 多チャネル時系列信号に対するブラインド信号源推定:分離精度と計算速度を両立した最先端の汎用手法
- 低コスト・高効率なテラヘルツ波吸収体と低コスト・高共振Q値な超伝導センサー
- 太陽電池素子を用いた低コスト量産型放射線計測技術
- オントロジーを活用したエネルギー管理システムのための統合的情報管理の実現
- 細胞内ガラクトース測定センサーの開発と創薬への応用
- 標的蛋白質を特異性高く、ある期間だけマウス体内で分解、消失させる
- 細胞エピゲノム情報を高感度・高精度・高効率に評価する技術
- 細胞膜と核膜の選択的透過処理による高精度核可溶性成分の分画法
- 個体飛跡検出器を用いた精密中性子イメージング技術の開発と展望 ~サブミクロンの位置分解能を実現~
- 低ゴースト・広視野角・低コストの空中ディスプレイ
発表内容詳細
- 10:00~10:25
- 情報
1)多チャネル時系列信号に対するブラインド信号源推定:分離精度と計算速度を両立した最先端の汎用手法
理化学研究所 革新知能統合研究センター 音響情景理解チーム チームディレクター 吉井 和佳
新技術の概要
複数センサで観測した多チャネル時系列信号(例:マイクアレイで観測した音響信号)を複数の信号源信号に分離する。信号源の時間周波数特性や信号源からセンサへの伝達特性が未知であっても適用可能な汎用的な技術。
従来技術・競合技術との比較
分離精度と計算効率とを両立した現時点で最先端のブラインド多チャネル信号分離手法。音響分野以外にも応用範囲が広く、リアルタイム処理にも応用可能。
新技術の特徴
・複数センサを用いた時系列信号に幅広く適用可能
・信号源や伝達特性などのドメイン知識が利用できる場合は高精度化が可能
・実装・拡張が容易で(GPUによる)非常に高速な並列計算が可能
想定される用途
・雑音環境下での音声強調
・生体信号処理(脳波や筋電など)
・アレイ信号処理一般
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
- 10:30~10:55
- デバイス・装置
2)低コスト・高効率なテラヘルツ波吸収体と低コスト・高共振Q値な超伝導センサー
理化学研究所 光量子工学研究センター テラヘルツイメージング研究チーム
チームディレクター 大谷 知行
新技術の概要
1. 金属マイクロコイル大量製造技術(藻類の大量培養技術を活用)を応用したテラヘルツ吸収体・低反射体を紹介する。無線通信領域での透過防止(余剰信号の遮断)・反射防止(余剰信号の低減)・干渉防止機能を低コストで実現する。
2. 従来の超伝導マイクロ波共振器の共振Q値を低コストで飛躍的に向上させた量子センサーを紹介する。
従来技術・競合技術との比較
1. 本技術は、従来のテラヘルツ吸収体と比較して一桁低い反射率を持つことに加えて、テラヘルツ波の位相を乱雑化する機能を備える。さらに、生体由来のマイクロコイルを活用することで、飛躍的な低コスト性を実現する。
2. 製造方法の工夫により、高い共振Q値を有する超伝導マイクロ波共振器を安価に提供することが出来る。
新技術の特徴
・従来よりも一桁低い反射率を持ち、位相を乱雑化できることに加え、生体由来の大量培養技術を用いることで飛躍的な低コストを実現する
・超伝導体によるマイクロ波共振器において、従来より飛躍的に高い共振Q値を安価に実現
想定される用途
・6G通信で重要となるテラヘルツ帯の透過防止材・反射防止材・干渉防止材
・宇宙(衛星)でのマイクロ波センサー、超伝導型量子コンピュータにおける高性能読み出しセンサー、高性能マイクロ波共振器
関連情報
・サンプルあり
- 11:00~11:25
- デバイス・装置
3)太陽電池素子を用いた低コスト量産型放射線計測技術
理化学研究所 光量子工学研究センター 中性子ビーム技術開発チーム 研究員 奥野 泰希
新技術の概要
太陽電池素子をもちいた低コストかつ高品質なガンマ線および中性子線を計測する技術を構築した。また放射線に対して広いダイナミックレンジ特性や高い放射線耐性を有している素子も設計に成功し、医療用や工業用に対する応用性が期待できる。
従来技術・競合技術との比較
放射線計測機器は、シンチレータ、電離箱など様々ある。これらの課題として、機器の健全性評価のために放射線を用いる必要があり、点検が難しいという課題があった。太陽電池素子を用いることによって、その電気特性や光学特性を取得することで簡便にセンサーの健全性を評価することが可能になった。
新技術の特徴
・太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)と変換膜を組み合わせたガンマ線・中性子等の線量計
・低コストで、変換膜を容易に調整・変更でき、幅広いエネルギーの線量計を実現
・空間的な線量分布、線量率の時間的な変化も計測できる
想定される用途
・宇宙部品や原子力部品開発時の放射線耐性の標準的な照射線量決定手法
・福島県全域での低コストな放射線計測
・がんの放射線療法中の照射線量決定用の基準センサー
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
・展示品あり
- 11:30~11:55
- 情報
4)オントロジーを活用したエネルギー管理システムのための統合的情報管理の実現
理化学研究所 情報統合本部 基盤研究開発部門 副部門長 小林 紀郎
新技術の概要
自然エネルギーを利用した分散型エネルギーシステムにおいて、オントロジーを活用して各種データに意味を付与してAIを利用したデータ連携を可能とし、電力需要予測、システム制御、システム設計、シミュレータの高度化を含む統合的な情報管理を実現する情報基盤実現に関する技術である.
従来技術・競合技術との比較
エネルギー生成・蓄積特性が異なる、多数の小型異種発電設備から構成される分散型エネルギーシステムにおいて、現行技術では実現できない、機器やデータの多様性およびそれらの変更や追加に容易に対応可能な情報基盤であり、発電設備を統括して精度よく全体の需要抑制を行う有効な方法を提供する。
新技術の特徴
・気象条件等により発電量が変動する再生可能エネルギーによる発電設備を含む分散型エネルギーシステムを地域特性や消費特性に合わせて実現し、さらに需要制御を包含する事で高精度な電力制御が可能
・自律分散方式による、多種多様な発電設備を集約し、仮想発電所を実現することが可能
・多種多様なデータに意味を付与し体系化する知識化の機能、AI、シミュレータ等の解析システムを変更・拡張可能な形で統合できる情報基盤を実現
想定される用途
・郊外地域や中小集落等で発電・消費を自立的に行う、比較的小規模の分散型エネルギーシステムの構築
・目的・用途を問わず、多種多様なデータを統一的に集約、利活用を推進する知識ベースの構築
・エネルギーシステムを含む、AIやシミュレータを活用したシステム設計、制御を行う知識駆動型デジタル変革情報基盤の構築
- 13:00~13:25
- アグリ・バイオ
5)細胞内ガラクトース測定センサーの開発と創薬への応用
理化学研究所 生命機能科学研究センター 動的恒常性チーム チームディレクター 兪 史幹
新技術の概要
私たちは、酵母に本来備わっているGalシステムを応用して、ショウジョウバエ細胞や哺乳類細胞でガラクトースの濃度を測定する遺伝学的なシステムGALDARを開発した(Sakizli et al. Plos Biology 2024)。このシステムを応用することで、哺乳類細胞内のガラクトース濃度の測定が可能である。また、ガラクトースとグルコースが同一のトランスポーターを介して細胞内に入ることから、このシステムは、細胞のグルコース/ガラクトースの取り込み能力の解析に使用可能である。グルコースの取り込みは糖尿病治療薬のターゲットの一つであり、GALDARは糖尿病治療薬の創薬の基盤プラットフォームと使える可能性がある。
従来技術・競合技術との比較
従来、細胞内のガラクトースやグルコースの濃度を測るには、細胞を潰して、キットを用いたり、質量分析を使うしかなかった。GALDARでは、細胞を潰す必要がなく、非常に簡便にガラクトース濃度の測定を行える。また、グルコースの取り込みに関しては、従来、蛍光のグルコースアナログの2NBDGがよく使われてきたが、これは高額試薬であり、ハイスループットの創薬には向かない。
新技術の特徴
・ガラクトースの細胞内濃度を測定
・ガラクトース/グルコースの取り込み測定に使用可能
想定される用途
・糖尿病治療薬の創薬のプラットフォームとしての可能性
・ガラクトースの細胞内濃度を測定する基礎研究
・ガラクトース/グルコースの取り込み機構を研究する基礎研究
関連情報
・サンプルあり
- 13:30~13:55
- 創薬
6)標的蛋白質を特異性高く、ある期間だけマウス体内で分解、消失させる
理化学研究所 生命医科学研究センター 免疫転写制御研究チーム
チームディレクター 谷内 一郎
新技術の概要
今回、培養細胞で広く使われている標的蛋白質分解技術のマウス生体への応用に成功しました。成体、胎児、新生児において、脳を含む様々な組織で特定の蛋白質を特異性高く、かつ特定期間のみ分解・消失させてその影響を観察することが出来、その標的分子制御によるin vivo薬効と副作用の予測に有効です。
従来技術・競合技術との比較
創薬研究における標的分子の妥当性検証において、1)生殖細胞の遺伝子ノックアウト(KO)では判らない発生分化関連蛋白質の機能解析が可能、2)Cre-loxpやCrispr-cas9による後天的遺伝子KOでは出来ない、標的蛋白質の発現復帰が可能、3)アンチセンスやsiRNAよりも有効性、特異性とも高いKO技術
新技術の特徴
・デグロンリガンドとして、マウス生体に影響の少ない植物ホルモン誘導体5-Ph-IAAを腹腔内投与することにより、マウス生体内の標的タンパク質の分解を誘導することができます
・妊娠中の母マウス、授乳中の母マウスにリガンドを腹腔内投与することで、胎児や新生児マウスにおいても分解誘導可能です
・がん治療にも用いられる免疫チェックポイント阻害薬の標的分子であるPD-1のような細胞膜タンパク質も分解できます
想定される用途
・ある蛋白質を医薬品候補の標的とした場合に期待されるin vivo薬効の確認
・ある蛋白質を医薬品候補の標的とした場合に留意すべきin vivo副作用の同定とその可逆性の確認
・同一マウス個体において、特定蛋白質の発現消失及び発現復帰の影響を解析出来るので、個体差の少ない、より精度の高い実験が可能となる
- 14:00~14:25
- アグリ・バイオ
7)細胞エピゲノム情報を高感度・高精度・高効率に評価する技術
理化学研究所 生命医科学研究センター ヒト免疫遺伝研究チーム
チームディレクター 石垣 和慶
新技術の概要
我々の開発した新しいエピゲノム解析技術は、クロマチンの開閉状態をゲノムワイドに解析する従来のATAC-seq手法を改良したものである。本技術は、複数のサンプルを同時に解析可能な高効率性に加え、関心のある遺伝子領域を特異的に増幅することで高感度な解析を実現する。さらに、分子標識を付加することで、正確な定量解析が可能となっている。
従来技術・競合技術との比較
従来のゲノムワイドなクロマチン開閉状態の解析手法であるATAC-seqと比較し、標的領域情報の濃縮効率は15000倍以上であり、大幅なシークエンスコストの削減が可能で、またUnique molucar identifierを用いた絶対定量によるクロマチン開閉状態の評価が可能となった。
新技術の特徴
・標的領域情報の超高精度の絶対定量評価
・大幅なシークエンスコストの削減
・サンプルプールによる実験効率の改善
想定される用途
・細胞生物学の基礎研究(細胞機能の評価など)
・遺伝学の基礎研究(アレル特異的解析など)
・臨床検査(患者の末梢血を用いた免疫機能のリアルタイム評価など)
関連情報
・サンプルあり
・デモあり
- 14:30~14:55
- 創薬
8)細胞膜と核膜の選択的透過処理による高精度核可溶性成分の分画法
理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム 研究員 小川 泰
新技術の概要
本技術は、生細胞内の局在をよく反映した核可溶性画分の新しい分画方法である。簡便な手順で完結するため、多サンプルでのスクリーニングにも適しており、プロテオームやトランスクリプトームに局在情報を加えた空間オミクス解析法において重要な要素となる技術である。
従来技術・競合技術との比較
従来の方法では、全核タンパク質の厳密な分画が難しく、多くの可溶性核タンパク質が分画過程で失われていた。本技術では、細胞膜と核膜を順に選択的に透過処理することで、正確な分画が可能となった。さらに、核-細胞質間の物質輸送を担う核膜孔を塞ぐことで、低分子量の可溶性核タンパク質の分画効率が大幅に向上した。
新技術の特徴
・従来の手法よりも正確に核タンパク質と細胞質タンパク質を分けて取得できる
・細胞質RNAと核内RNAの取得にも利用可能
・簡便なプロトコルであるため96ウェルなどのマルチプレックスにも適している
想定される用途
・核細胞質分画キットの開発
・タンパク質とRNAの局在や発現量全体を分析する空間オミックス解析
・新規薬剤開発のためのマルチプレックススクリーニング
- 15:00~15:25
- デバイス・装置
9)個体飛跡検出器を用いた精密中性子イメージング技術の開発と展望 ~サブミクロンの位置分解能を実現~
理化学研究所 開拓研究所 齋藤高エネルギー原子核研究室 主任研究員 齋藤 武彦
新技術の概要
蛍光飛跡検出器(FNTD)と中性子コンバータ(ホウ素薄膜)を用いた中性子検出器を開発し、それを用いた中性子イメージング技術を開発した。それによりサブミクロンのイメージング分解能(空間分解能)を達成し、中性子イメージングとしては世界一の制度を実現させた。
一度現像すると再利用できない原子核乾板(写真乾板)と比較し、本技術に用いたFNTDは再生利用可能である点もアドバンテージの1つであり、今まで7回の再利用にも成功している。
従来技術・競合技術との比較
中性子を用いた計測装置の位置分解能としては、これまでの世界記録は3-5ミクロンであった。また、類似したh技術で原子核乾板を用いた中性子イメージングの場合は検出器の再利用は不可能であった。
新技術の特徴
・中性子を用いた計測装置として、位置分解能(空間分解能)が世界一レベル(0.9ミクロン)
・再利用可能(何回でも測定可能)
・検出器が安価でかつ非常に小型である
想定される用途
・中性子イメージング
・中性子ビームを用いた透過像計測装置
関連情報
・サンプルあり
- 15:30~15:55
- デバイス・装置
10)低ゴースト・広視野角・低コストの空中ディスプレイ
理化学研究所 光量子工学研究センター 先端光学素子開発チーム 研究員 海老塚 昇
新技術の概要
低コスト・低ゴースト・広視野角を実現した新技術による空中ディスプレイを紹介する。本装置は直交した2枚の透過型三角格子で構成され、映像や物体を空中に投影する機能を有する。透過型三角格子において一方の面から入射した光束がもう一方の面で反射して裏面から出射し、格子と直交する方向に実像を結像する。
従来技術・競合技術との比較
従来の空中ディスプレイはミラー基板を積層して切断し、研磨するなど、高額であった。また、スクリーンを直進あるいは、2回反射する光束がゴーストの原因になり、視野を広く取ることが困難であり、ゴーストを防止する機構を設けると、さらにコスト高になった。今回紹介する技術はこれらの課題を改善できる。
新技術の特徴
・製造コストが安価。ニッケル・リン合金や無酸素銅などの金属材料にダイアモンド切削加工などにより鋳型を製作し、樹脂のレプリカ加工が可能。また、硬質樹脂材料等に直接加工が可能。
・視線方向に光束を集中させることができるため、ゴースト(迷光)が少ない。
・迷光が視線方向から大きく外れるために、視野を広くすることが可能。視野は折り返す角度によって異なるが、ゴーストを防止する機構が無い従来の空中ディスプレイの概ね2倍の視野が得られる。
想定される用途
・非接触タッチパネル
・ヘッドアップディスプレイ
・立体映像ディスプレイ
関連情報
・デモあり
・展示品あり
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TEL:048-235-9308
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